民法勉強中・・・

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制限行為能力者がした金銭消費貸借契約を保証した者の法律関係

現在、民法総則の「取消し」と、債権総論の「保証」について勉強しています。

そこでふと、「未成年などの制限行為能力者がお金を借りる契約(金銭消費貸借契約)をする場合に、保証人になった者がいるとき」はいろいろな論点が生じるということに気付きました。
そこで、今回は保証人がどのような権利を主張することができるか、どのような責任を負うかについてまとめてみました。

 

1.主たる債務者が取り消した場合

事例

未成年者であるAがBから100万円を借りて(法定代理人の同意を得ていない)、Cが保証人になった。Aが金銭消費貸借契約を取り消した。この場合は、Cはどのような責任を負うか?

(1)未成年者Aの責任

未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は取り消すことができます(5条1項)。取り消した場合は、取消しの効果により契約は初めから無効であったものとみなされますので(121条)、契約によって既に引渡されているものがあるときは、返還する義務があります(121条の2第1項)。ただし、未成年者を保護する観点から「現に利益を受けている限度(現存利益)」の範囲内で返還義務を負うことになります(121条の2第3項後段)。

事例の場合は、AはAB間の金銭消費貸借契約を取り消すことができます。仮に、Aは現存利益の範囲内でBに返還すれば良いことになります。

(2)保証人Bの責任

主たる債務が取消しにより、主たる債務は発生しなかったことになるので、付従性により保証債務も発生しなかったことになります。

しかし、これには例外があります。行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定されます(449条)。

取消し原因を知っていたとは、制限行為能力者が法定代理人の同意を得ないで契約をしたことを知っていたことを指します。

この規定の趣旨は、保証人が制限行為能力者が法定代理人の同意なしに借金などの契約をすれば、取り消される可能性があるのということを知っていて、それにもかかわらず保証人になったという場合は、取り消されてもなお保証債務を負うという意思があるということが推定されるためということ理由としています。

よって、保証人Cは取消しの原因を知っていたときは、100万円全額を返還する義務を負います

一方、保証人Cが取消しの原因を知らなかったときは、責任を負わないことになります。この場合の「責任を負わない」とは、保証人Cは100万円全額を支払う責任を負わないのはもちろん、A自身の返済義務の「現に利益を受けている限度(現存利益)」についてもCは責任を負いません(たぶん)。

関係あるかわかりませんが、主たる債務が無効により付従性により保証債務も無効になった場合は、保証債務は不当利得返還義務についても及ばないとする判例があります(最判昭41・4・26)。主たる債務の発生原因である契約が解除された場合の原状回復義務について、保証債務は不当利得返還義務に及ぶとする判例があるようです(最判昭40・6・30)。取消しによる原状回復義務についても、解除の場合と同様に考えるようです。よって、Aの「現に利益を受けている限度(現存利益)」についてもCは責任を負うのかもしれません(チョット良く分からん・・・)。2026/07/26訂正

2.主たる債務者が取り消さない場合

(1)保証人は取消すことができるか?

事例

未成年者であるAがBから100万円を借りて(法定代理人の同意を得ていない)、Cが保証人になった。Aが金銭消費貸借契約を取り消さない場合に、Cが取り消すことができるか?

前述の通り、制限行為能力者である主たる債務者が金銭消費貸借契約を取り消した場合は、取消しの原因を知らなかった保証人は責任を逃れるので、主たる債務者が取り消さない場合は保証人が取り消すことができるとしても良さそうです。

しかし、行為能力の制限によって取り消すことができる者は、以下の者に限定されています(120条1項)。

  • 制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む)
  • 代理人
  • 承継人
  • 同意をすることができる者

したがって、保証人であるCは(取消し原因について知っていても知らなくても)AB間の金銭消費貸借契約を取り消すことができません(大判昭20・5・21)。

理由としては、取り消すかどうかは表意者自身(法定代理人なども含むが)が判断するべきで、本人ではない保証人が取消権を行使することは本人の意思に対する過度な介入であるので、認められないなどと説明されることが多いです。

(2)保証人による履行拒絶権

事例

未成年者であるAがBから100万円を借りて(法定代理人の同意を得ていない)、Cが保証人になった。Aが金銭消費貸借契約を取り消さない場合に、BがCに100万円の返還を請求してきた場合にCは履行しなければならないか?

上記の1・2で確認したように、仮に主たる債務者である制限行為能力者が金銭消費貸借契約を取り消せば、保証人の債務もなかったことになります。しかし、保証人には取消権がありませんので、主たる債務者が取り消さないと保証人は債務を履行しなければいけなくなってしまします。

そこで、主たる債務者が債権者に対して取消権を有する場合は、保証人は債権者に対して債務の履行を拒むことができるとされています(457条3項)。

結局、主たる債務者が取り消さない場合は、保証人であるCは取り消すことはできないが、保証債務の履行は拒むことができるとなります。

なお、条文には規定されていませんが、449条において主たる債務が取り消した場合はに保証人の債務がなくなるのは、保証人が取消し原因を知らなかったときに限られる関係上、457条3項による履行拒絶権が認められる場合も保証人が取消し原因を知らなかったときに限られるとされているようです*1

3.まとめ

以上のように、「制限行為能力者が取り消した場合の保証人の責任」と「保証人の履行拒絶権」については、保証人が取消し原因を知っていたかどうかで結論が変わってきます。

  知っていた場合 知らなかった場合
制限行為能力者が取り消した場合の
保証人の責任
責任あり 責任なし
制限行為能力者が
取り消さない場合
保証人の取消権 なし
保証人の履行拒絶権 なし あり

※解釈による

*1:中田裕康『債権総論』620頁(岩波書店、第5版、2025年)