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令和3年の民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法改正をザックリまとめてみた

令和3年の民法改正は、所有者不明土地問題に対応するために民法の物権法及び相続法の規定を見直しました。それとともに、不動登記法を改正し、相続土地国庫帰属法*1を新たに制定しました。

民法の物権法の改正は、共有などを中心にかなり広範囲に及ぶ大改正です。

そこで今回は、令和3年の民法改正についてザックリテキトーまとめています。

 

改正の背景:所有者不明土地問題

所有者不明土地は、不動産登記簿から所有者が判明しない土地を言います。所有者不明土地は、所有者が不明のため土地の管理が難しく環境面など悪化により近隣住民に迷惑がかかり、災害時においては所有者の同意を得ることができないので復興が進まないなどの問題点があります。

所有者不明土地が発生する原因としては、不動産登記の所有権登記名義人に相続が発生しているにもかかわらず相続登記がされていない点と、住所が変更されたにもかからず住所変更登記がされていない点があります。相続登記や住所変更登記は改正前は義務でなく、少子高齢化・都市部への人口集中など様々な要因により、相続した土地に対する関心が低くなっていることも背景としてあります。また、代々数次に相続がされているにもかかわらず相続登記がされていないと、相続人が非常に大人数になり相続登記をするのがより難しくなります。

2016年時点で所有者不明土地は、九州の土地面積(約367万ha)を超える約410万haに及び、喫緊の課題として対応が求められていました。

民法不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法の新設

所有者不明土地の問題の対策としては、これ以上所有者不明土地を増加させないための事前策と、既に発生している所有者不明土地をどのように活用するかという事後策があります。

前者に対応するのが、相続登記義務化などの不動産登記法改正、相続した土地が不要な場合に国庫に帰属させる相続土地国庫帰属法の新設があります。

後者に対応するのが民法で、物権法を中心に改正し土地の所有者が不明の場合に対応する制度を新設するなどの対策を取っています。

これらの改正は、令和3年4月28日に公布され、令和5年から段階的に順次施行されています。相続登記の義務化は令和6年4月1日施行されました。所有権登記名義人の住所等の変更登記の義務化は令和8年4月1日予定。

民法改正について

相隣関係

所有者不明の土地があると、隣地の所有者に不利益を及ぼすのでその対策のための改正がされています。また、隣地の使用に関して不明確であったりした部分について条文に明記した部分もあります。

  • 隣地の規定の見直し:主に、①隣地の使用ができる場合について明記(209条1項)、②隣地の使用には事前の通知が必要だが通知困難なときは事後通知でも可とした(209条3項)
  • 電気・ガス・水道などのライフラインを引き込むための設備を他人の土地に設置できる権利又は他人が所有する設備を使用できる権利を明記した(213条、213条の2)
  • 他人の土地の枝が越境したとき、竹木の所有者が不明等の場合は、越境されている土地の所有者が自ら枝を切り取ることができるとした(233条3項)

共有関係

土地の共有者の中に不明者がいる場合には共有者間の意思件決定が困難になり土地の活用が阻害されるため、不明者を除いた共有者の同意で土地の管理等ができるようにする改正がされています。また、共有に関して不明確であったりした部分について条文に明記した部分もあります。

  • 共有物の全部について使用する共有者は他の共有者に対して自己の持分を超える使用対価を償還する義務を明記(249条2項)、共有者は善管注意義務を負う旨を明記(249条3項)
  • 共有物の軽微な変更(砂利道をアスファルトに変えるなど)については、共有者全員の同意ではなく、管理行為として持分の過半数の同意でできるとした(251条1項括弧書)
  • 共有物の使用に関して共有者の過半数で決定できるが(252条1項)、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすときは、その共有者の承諾を得なければならないとした(252条3項)
  • 共有者の管理者に関する規定を創設(252条1項括弧書、252条の2)
  • 共有者の中に所在等が不明な者や管理に関する事項につき賛否を催告しても回答しないものがいる場合に、裁判所の裁判で当該共有者以外の共有者の同意で、管理に関する事項を決定できるとする仕組みを創設(252条1項、252の2第2項)
  • 裁判による共有物分割について現物分割と競売分割のみ規定されていたのを賠償分割も明記(258条2項)、共有物分割の裁判による金銭の支払いや物の引き渡しや登記の履行に関する給付命令を明記(258条4項)
  • 所有者不明共有者の不動産の持分を、裁判所の手続により他の共有者が取得する制度の創設(262条の2)
  • 共有者の中に所在等が不明の者がいる共有不動産を、所在等不明者以外の全員が持分を譲渡することを停止条件として、第三者に譲渡する権限を所在等不明者以外の党区帝の者に付与する裁判制度の創設(262条の3)

財産管理制度

所有者が不明の土地や建物は管理が疎かになり、土地・建物の荒廃をもたらし、周辺地域に悪影響を及ぼします。そのような不動産の適正な管理を図るために管理人を選任する制度を創設しました。

  • 所有者不明土地・建物について必要があると認めるときに、利害関係人の請求に基づき所有者不明土地(建物)管理人を裁判所が選任する制度を創設(264条の2~8)
  • 所有者による土地の管理が不適当で他人の権利利益が侵害され又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときに、利害関係人の請求に基づき管理不全土地(建物)管理人を裁判所が選任する制度を創設(264条9~14)

相続関係

相続に関る規定も改正しています。主に、遺産分割が長期間されないことによる問題(遺産分割されないで数次相続が繰り返されると、相続人がネズミ算式に増えてしまい管理が難しくなる)が指摘されていたので、遺産分割につき期限制限を設けました(904条の3)

  • 相続開始から10年を経過した場合は、具体的相続分に基づく分割を原則不可として(特別受益寄与分を考慮することができなくなる)、法定相続分によるとしました(904条の3)
  • 相続放棄した者の管理義務を負う場合について、放棄の申述時に相続財産を現に占有している場合に限るとした(940条1項)
  • 相続人が不存在の場合の手続の清算手続きについて合理化して短縮した(952以降)

不動登記法改正について

所有者不明土地を増やさないために相続登記の義務化・住所変更登記の義務化をする一方、申請人の負担を軽減するための制度を新設しました。

  • 所有者不明土地の増加と言われる相続登記の申請されないことを防止するために、相続登記を義務化した。相続により不動産の所有権を取得した相続人について、相続開始から3年以内に相続登記をすることを義務付けた(不動登記法76条の2)
  • 相続登記の義務化に伴う負担を軽減するため、①申請時における戸籍謄本等の提供を簡略化するための相続人の氏名・住所を公示に特化し持分を公示しない相続人申告登記を新設(不動登記法76条の3)、②被相続人名義の不動産を把握しやすくするため被相続人の不動産をリスト化した所有不動産記録証明制度を新設(不動登記法119条の2)
  • 所有権登記名義人の氏名・名称・住所に変更があった場合は、変更があった日から2年以内に変更登記をすることを義務付けるとともに(不動登記法76条の5)、登記官の職権による住所等の変更登記の制度を新設(不動登記法76条の6)
  • 所有権登記名義人が死亡したと認められるときは、登記官の職権でその旨の表示ができる制度を新設(不動登記法76条の4)

また、DV・ストーカー被害防止のために、一定の場合に登記事項証明書に住所に変わる事項の記載をすることができるように改めました(不動登記法119条6項)

相続土地国庫帰属法について

相続という自らの意思によらず不動産を取得したのに、土地の活用のあてもなく、処分することも難しい場合は、相続する者にとって負担になります。

一方で、民法上は土地の所有権の放棄につき規定がなく、その可否に関して解釈が分かれていました。仮に認めるとすると、国庫に帰属することになり(民法239条2項)、管理の難しい土地は所有権を放棄してしまえば国にその管理コストを転嫁できるというモラルハザードが起こるという問題が指摘されていました。

そこで改正法は、一定の要件を満たす土地について負担金を国に収めることにより国庫に帰属することができる制度を創設しました。

主なポイントは

  • 一定の要件を満たす土地(建物は不可)
  • 相続等により土地・共有持分を取得した場合
  • 法務大臣の承認が必要
  • 一定の負担金を国に収める必要がある

要件を満たさない土地としては

  1. 建物の存する土地
  2. 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
  4. 特定有害物質により汚染されている土地
  5. 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

*1:正式名称は、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律です。